源流 句会 便り

 平成17年7月1日より 7年3ケ月
    お世話になりました。

先生の健康状態により残念ながら終刊になり
ました。


源流発行所  福井県三方上中郡若狭町市場
          発行人  古川 淨雪 師




  源流 句会  主宰 古川 淨雪




2014.10.25 源流 第五十号にて 古川 淨雪 選        
     最終刊



暮れ残る 軒端の影や 釣り忍         峰月

晩夏光 髭題目の 碑を拝す      峰月 特選

鑑賞 古川 浄雪 この髭題目とは文字の筆端を髭のように撥ねて書く事の
様であり、隷書の撥ねを長くしたように思われるが、日蓮宗の南無妙法蓮華経
の俗名とある。今作者はこれを拝し晩夏光の中に立っているのだ。よく見えてき
ます。私もどこかで一二度拝んでいるのだろうか。

ぼうたんに 頭隠して 丸き蜂          峰月

青葦や 近江風土記の 丘巡る        峰月

夏草や 峠二つの 氷室跡           峰月

山百合や 変らぬ販ぎ お六櫛         峰月

蛍宿 旬の川魚尽くしかな            峰月

 貼紙に 頭上の注意 軒燕        峰月

2014.10.25 源流 第五十号 古川 淨雪 選          
最終刊    八句選    源流抄


蕉翁と 木曽殿濡らす 木の芽雨       峰月

張りぼての 白象引かる 花祭     峰月 特選

鑑賞 古川 浄雪 この「花祭」は釈尊誕生の四月八日の潅仏会の俗称であ
る。またこの「白象」は釈尊の母マーヤがある時自分の胎内に白い象が入った
夢を見た。その後その化身として釈迦の誕生があったというのである。こんな
伝説の中での花祭であるが、竹の骨組みの紙張りぼての下に車をつけ「白象」
を引き回す伝承である。

義仲寺の 堂の甍や 彌生雨         峰月

手庇に 九十九島の かすみけり       峰月

春泥の 靴の重さを 歩きをり         峰月

擂粉木を 指に味見る 木の芽和へ     峰月

梅が香に 送るや義兄の 音楽葬       峰月

2014.06.22 源流 第四十九号 古川 淨雪 選         
         七句選    源流抄


鉢物も 鬼門に置きし 実南天     峰月

大寒の 稜線澄みし 比良比叡     峰月 特選

B棟へ 曲る病廊 咳一つ        峰月

嘴の 一撃ありし 木守柿        峰月

除夜の鐘 行列の人 次々と      峰月

福笹や 福を零さぬ やうに持ち    峰月

裸祭 遠巻きにして 着膨れぬ     峰月
私の推賞句 松岡 悦子 選 「着膨れ」の季節を生かしたユーモラスな
句です。

2014.03.20 源流 第四十八号 古川 淨雪 選         
         七句選    源流抄


台風一過 有難すぎる 晴ありて 峰月

卓上の 瓶に稔りし ねこじゃらし    峰月
私の推賞句 高橋 洋一 卓上のねこじゃらしが穂をつけた。指で弾いてりし
て、楽しんでおられるのだろうか。

蓑笠を 戸口に吊りて 鵜匠宿     峰月 特選

夕菅や 宿の迎への 舟に乗る    峰月

仏顔に 見えくる石や 月の夜     峰月

月今宵 月下美人の 咲きにけり    峰月

りんだうの 京見峠に 水貰ふ     峰月

月を西 日はひんがしに 秋彼岸    峰月

2013.12.25 源流 第四十七号 古川 淨雪 選         
         八句選    源流抄


2013.09.20 源流 第四十六号 古川 淨雪 選         
         掲載なし    源流抄

亡き母の 声楚々として 初桜     峰月

ふるさとに 小さき城跡 花の山    峰月

散る桜 女院の跡の 庭静か      峰月 特選

衿に手を 合はせ仰ぎぬ 初ざくら   峰月

花筏 堰くものなくて 高瀬川      峰月

いづれより 風に乗り来し 花一片   峰月

花散りぬ 疎水の道の 良き風に    峰月



仰ぎつつ 行き戻りして 桜堤      峰月

2013.06.18 源流 第四十五号 古川 淨雪 選         
         八句選    源流抄


寒水の 宮の手水に 畏まる       峰月

仕舞ひ湯と 言へど二人目 柚子浮かべ   峰月

破れ蓮の 水面に夕日 豊なる    峰月 特選

左義長に 残る太棹 つつき燃す     峰月

グッピーに あたためてやる 寒の水  峰月

木の杓に 音す宮居の 寒の水      峰月

湯上りの 風花の道 小走りに      峰月

鯛焼の 温かさ買ふ 列にゐて      峰月

2013.03.20 源流 第四十四号 古川 淨雪 選         
          八句選    源流抄


待宵や 拝借したき 椿杖       峰月  特選

待宵の 無月や明日も 雨予報     峰月

開き閉づ 意識の外の 秋扇       峰月

新米の 塩むすび食ふ 翁堂       峰月

翁堂の 魚板ゆらせる 野分かな    峰月



落ち蝉の 翁の塚に 侍るごと      峰月

木曾殿に 四五本並ぶ 萩の供花    峰月

翁堂 借景にして 萩芒          峰月

2012.12.26 源流 第四十三号 古川 淨雪 選 
  八句選 源流抄


夏料理 揃いの布巾 被せあり       峰月

若葉風 しほり代りの 正誤表       峰月

画布にある 紫陽花今日の 色を足す  峰月

襟元を 正し水打つ 女将かな       峰月

時の日や 抽斗にある 古りし時    峰月 特選

萬緑を 湖水に活けて 竹生島       峰月

十薬の 薬効と云ふ 匂ひかな       峰月

早乙女の 一列と言ふ 美しさ       峰月

2012.09.26 源流 第四十二号 古川 淨雪 選         
          八句選   源流抄


ヒロシマの 河に雨紋や 春きざす   峰月

定宿の 窓の木に来し 初音かな    峰月

静かなる 畑に鋤き込む 花吹雪    峰月 特選

梅の山 匂ふより見る 小豆島      峰月

沈丁花 瀬戸内の波 光るのみ      峰月

水替への 馬穴渦巻く 春の水      峰月

あたたかや 久に爪弾く 妻の琴     峰月

2012.06.23 源流 第四十一号 古川 淨雪 選 
  八句選  源流抄


足入れて 猫に掻かれる 二日かな  峰月

鬩ぎ合ひ 凌ぎ合ふごと 受験絵馬   峰月

寄席果ての 崩し座りの 足袋白き   峰月

梅林といふ 匂い袋の 中にゐて    峰月 特選
 うめ
評 この句、そのものずばりの句であるが、ここには大きな「匂い袋」という比喩
的表現がある。こうした表現が出来たことをすばらしい出来栄えと思うのであ
る。 古川 淨雪

菜箸を 指揮棒にして 鍋奉行      峰月

孤独てふ 音あらば聞く 枯れ葉道   峰月

作務僧に 欅大樹の 散り止まず    峰月
大きなお寺の境内にはこれに相応しい樹木がある。これらの落葉掃きは 作務
僧の日課である。一巡するとまた元の状態。修行とはいえ「散り止まず」が厳し
い。  古川 泰石 評
2012.03.20 第四十号 古川 淨雪 選               
                  源流抄


易の灯を 秋灯として 祇園小路    峰月

名月や 沖島より 月の道        峰月

ひとつづつ あかりとなりぬ 大和柿  峰月

紅葉照る 魚の破りし 水鏡       峰月

美しき 落葉お金に 泥団子       峰月

落柿舎へ 曲る藪道 柿紅葉       峰月

街の灯を 消して燃え立つ 大文字   峰月   特選
評 大文字は京都如意が岳の盆の送り火であり、当日左大文字もある。一部
は消したとしても、実は街の灯に背を向けたのである。俳句は世界最短の詩で
あるがこの句の中七に詩があるのだ。  古川 淨雪
評 大文字の夜、京都は灯を消して祈るが、去年は東日本大震災への追悼が
加わり、格別な灯でなかったろうか。そのように詠ませてもらった。高橋 洋一
2011.12.27 第三十九号 古川 淨雪 選     源流抄    
             聖和の直さんへ戻る。


節電の 地下道間飛びの 灯の凉し   峰月

旅立ちの 絮大きかり 鬼あざみ     峰月

なめくじり いま来し道の 輝かし     峰月

風鈴の 寝言のごとき 真夜の風     峰月

真っ盛りと 云へば盛りや 枇杷の花  峰月特選

打水の 打ち過ぎたるを 跨ぎけり    峰月

竹落葉 弧を描きながら 着地せり    峰月

2011.09.27 第三十八号 古川 淨雪 選     源流抄


一灯を 掲げて燈台 春の海       峰月

春の海 見ゆる限りに ふくらめり    峰月

九十九里 斜めに寄せて 春の波    峰月    特選
評 千葉県九十九里浜と察するが、この浜は犬吠崎から勝浦漁港までの間に
ある。約六十キロである。この浜は東北から南西へ向けて湾曲しているが、こ
の句 この線を「斜めに寄せて」と詠んだのであろう。この波がひねもすのたり
のたりかなのごとく寄せているのであろうか、のどかである。 古川 淨雪 選

翁の墓 背中合わせに 春句会      峰月

囀りを 翁とふたりに 分かちけり     峰月

木の芽吹く 空に掛けたる 長梯子    峰月
評 剪定だろうか。梯子を掛けられたが、木の葉の密度はまだ低く大空に梯子
をかけたように思われた。スケールの大きな句。私の共鳴十句選 森口 かな
江 選

木蓮の 封を切られて 風生るる     峰月
評 「封を切られて」という比喩的表現が生きている作品。白い木蓮の花が開く
時のシーンを「封を切った」と見た発想が素晴らしい。しかも風が封を切ったの
ではなく、木蓮の花が開く瞬間に風が生れたと捉えたところに意表を衝く感覚
のひらめきが感じられる。私の鑑賞句 新渡戸 流木 選

2011.06.20 源流 第三十七号  古川 淨雪 選  源流抄


水掻けば 同じ動きの 海鼠かな     峰月

夜目にある 水仙の道 岬まで       峰月

このわたと このこの蔵す 海鼠取り   峰月

荒崖の 土あるところ 野水仙       峰月

荒崖の 水仙ばかり みぎわまで      峰月

香とともに 簀巻きにされし 水仙花  峰月 特選

首尾共に 不明の海鼠 動かせる     峰月

新聞紙 海鼠掴むに 欲しけり       峰月
評 盥に入れた海鼠をさあ調理だ。巧く掴みあげるにはどうするか、新聞紙を使
うのが良さそうだ。 こんな場面を思った。上句の「首尾共に不明な海鼠」を掴
みあげるのにどうして新聞紙なのか。考えれば考えるほど楽しい。私のの推賞
  高橋 洋一 選
2011.03.30 源流 第三十六号 古川 淨雪 選
  八句選 源流抄


十三夜 鴨の水尾に 毀れけり      峰月

寄席跳ねて 連れてもどりぬ 十三夜 峰月 特選

よせとは 寄せ席のことであるが、跳ねるとは またその日の興行が終る事で
ある。作者の寄席を見る余裕の一日。今夜は後の月。中天の月であったので
あろうか、徒歩での帰りの作であろうかとも思われるが、実にすばらしいおみや
げである。  古川 淨雪 選
対岸の 祇園甲部や 十三夜        峰月

先斗町の 空細長し 十三夜         峰月

瀬の音に 光落して 十三夜         峰月

巽橋 振り向く空や 十三夜         峰月
十三夜でどの句も古都の風情を表現され感動しました。白川にかかる巽橋、舞
妓さんの振り向く姿が浮かびます。 松岡 悦子

上七軒 路地鍵形に 十三夜        峰月

2010.12.30 源流 第三十五号 古川 淨雪 選  
  源流抄


水満たす あひだに泣ける 金魚玉     峰月

緑陰や 太極拳の たおやかに        峰月
私の推賞句 磯谷 知恵子  朝日を浴びて緑陰に集い、老いも若きも太極拳
に、思う存分気合を入れて腹の底から掛け声を出す。齢も顧みず思わず仲間入
りして見たくなります。

身を載せて 切るほどでなき 西瓜切る   峰月

荒梅雨や 一瞥に過ぐ 親不知        峰月

明易し 妻の寝顔に 光の輪      峰月 特選

泥けむり 立てて何棲む 植田かな      峰月

梅雨晴れの 在所に一寺 一社かな     峰月

一族の ごとき群立ち 姫女苑         峰月

2010.09.27 源流 第三十四号 古川 淨雪 選 
   八句選 源流抄


咲き満ちて 影を生みたる 桜かな      峰月

春の海 等間隔に 起こる波           峰月

ふらここの 背に母の手の 厚さかな    峰月

母が見守ってくれている。時には手に手を添えて押してくれる。たらちねの母よ
 おおき掌の母よ。 高橋洋一 推賞句

振り返へる 佐渡を横たふ 春の海      峰月

落柿舎の 開け放たれて 春障子    峰月特選

花筏 組ませぬほどの 速さかな     峰月

石灰の 白さ食わせて 春耕す      峰月

2010.06.20 源流 第三十三号  古川 淨雪 選
  源流抄


白飯に 煮凝溶くる その間       峰月
その間 良。昔を思い出す。

臥竜松 くぐりて参る 淑気かな     峰月
臥竜松とは造語的ながら嫌味なし。

叡山を 真向ひにして 御慶かな     峰月
新年のすばらしい景。御慶。

日溜りの 猫をのかせて 歳暮来る   峰月 浅田 豊 十句選
退かせて が 面白い。佳句。

枯芝の 広さに雲の 影踏みぬ     峰月
広く大きい最短詩。佳句。

結びたる ままに枯れたり 草の罠   峰月 新渡戸 流木
草を結んで足を引っ掛けるものか。良。

能登時雨 能登一島を 仕舞ひけり   峰月
能登一帯の大時雨。見事。

梯子より 声落ちて来て 松手入     峰月
短評 声でよかった。快晴。

2010.03.20 源流 第三十二号 古川 淨雪 選
  第一回 源流賞 受賞  源流抄


風光る 熊川宿に 日章旗         峰月

熊川宿 道の駅 投句箱


雲去りて 窓辺に高き 月明り        峰月   推奨句

群雲や 月の素顔を 出し隠し       峰月

門に出で 幾たび見上ぐ 無月かな    峰月

秋風や 丁寧言葉 使う妻          峰月

大琵琶湖 次々浮かぶ 秋の雲      峰月

団地の灯 何時消ゆるやら 夜の長し   峰月

落鮎や 古座の流れを 瀬切りして    峰月

2009.12.25 源流 三十一号 冬号 古川 淨雪 選 源流抄


半夏生 仏飯高く盛られけり         峰月

海の波 押し出す河口 半夏生       峰月

上るにも 下がるも 祇園祭り鉾       峰月
鑑賞句 京都八坂神社の祭礼は七月十七日から一週間 本当は七月一日から一ヶ月です。 
夏の季語にもなっている大祭礼。碁盤割目の京の町。この句そのものずばりの表現ではある
が、京の町の町柄と祭りの様子がよく伝わってくる。中七から下五にかけての祇園祭鉾 が効
いてくる。 古川 淨雪 

紫陽花を 剪りし鋏の 濡れしまま      峰月

田の隅は 嫗手植ゑの 青田かな      峰月

川面まで 落ちずに消ゆる 鵜篝火      峰月

消せる灯を 消して持て成す 蛍宿      峰月

2009.10.08 源流 三十号 記念号 古川 淨雪 選 源流抄


春光や 透かす暖簾の 裏の文字      峰月

石蹴りの 跳びゆく先の 春の泥       峰月

色紙に ほどけて逝きし 流し雛       峰月

春の月 潮のしづく 落としつつ        峰月

大原女に 千歳の由緒 春浅し        峰月

ぼうたんの 値札のままに 植ゑらるる   峰月
私の推賞句 松岡 悦子 より 買ってきたばかりの牡丹の株を早く土に植えて
あげようとする作者のやさしさが伝わってくる作品。大輪の花が早く咲くことを願
って一心に土をかぶせている作者の様子が見えるよう。 第三十号より

2009.06.16 源流 六月号 古川 淨雪 選 源流抄


冬ざれて 破風に水の字 風の文字    峰月

一管の 竹の閉ざせる 冬の寺       峰月

仕舞湯と 言へど二人目 柚子湯かな   峰月

懸り凧 糸の分だけ 揚がりけり      峰月 淨雪 鑑賞句

北山は 時雨いるらし 加茂晴れて     峰月

福娘 笑顔を添へて 笹売れり        峰月

善き言を 書き留めている 初詣      峰月

2009.03.19 源流 三月号 古川 淨雪 選 源流抄


火の消えて 闇に沈づまる 鵜飼舟   峰月

手の土は 草の露にて 洗ひけり    峰月

落ちさふな ものみな落ちし 野分かな 峰月

東山 二十三夜を 枕とす        峰月
     桂田 はじむ 共鳴句

二十三夜 風の移ろふ 大覚寺     峰月

その涯は 雲となりゆく 花芒       峰月

コスモスの 花裏見せて 揺れ戻す   峰月

平成二十年 十二月号 古川 淨雪 選 源流抄


円窓に 切り取る庭や 晩夏光      峰月
主宰 鑑賞 古川 淨雪
どこの様子かは分からないが (京都東山区 雪舟寺です) 円窓に切り取る 
という表現に先ず心を引かれる。ここには周囲が邪魔しない切り取られた景色
と奥行きがある。そして晩夏の光りが差し込んでいる。この句観察と表現の巧
みさに賛美をたたえたい。中七の切れ字も効いた。

瀬音みな 光りとなれり 鮎の竿       峰月

何時すると 決めず手花火 求めけり   峰月

腰伸ばす 藍の夜刈りの 川風に     峰月

草丈に 風の死にたる 藍夜刈り      峰月

待ち合はす 妻が上げたる 白日傘    峰月

火の消えて 闇に消えたる 鵜飼舟     峰月

平成二十年 九月号 古川 淨雪 選 源流抄


細波に 着かず離れず 花筏       峰月

木洩れ日の 水面閑かに 花筏     峰月

閉館の 一灯に照る 夜の桜       峰月

娘の墓の 濡れて化粧の 桜かな    峰月

壬生念仏 屋根にゆらぎし 蜘蛛の糸 峰月
私の共鳴句 新渡戸 流木 選

霞より 舟こぼれ来し 堅田港       峰月

雪雫 城下の屋並 半里ほど       峰月

平成二十年 六月号 古川 淨雪 選 源流抄


鎌倉は 雨の冬至と なりにけり     峰月

地球儀の 傾ぶくままに 冬日差し    峰月

霜柱 轍に溶ける 野道かな        峰月

蟷螂の 構へしままに 枯れにけり    峰月

夕焚火 嘘美しく 燃へにけり       峰月

押しピンの 抜け易きかな 暦果つ    峰月

押しピンで掛けているが一年に十二回も抜き差しすると抜け易くなるのは当
然。そして果てるのである。俳句は下手な理屈や
人の真似そして奇想天外な言葉も駄目。この句の新しい表現が良い。
古川 泰石 私の共鳴句より

落し物 掛かりしままに 冬枯るる    峰月

平成二十年 三月号 古川 淨雪 選 源流抄


迷わずに 出雲新蕎麦 頼みけり     峰月

卯建毎 秋日を溜めて 古家並み    峰月

残る虫 称名のごと 聞こえけり      峰月

ひつじ田の それなりにある 実りかな 峰月

滑走路 丈なき草の 実をつけり     峰月

岩木山 秋の一雲 吐かれけり      峰月

稲架襖 立てて赤子に 乳房やる     峰月
聖和の直さんへ戻る。
平成十九年 十二月 古川 淨雪 選 源流抄


富士川の川止めにあふ 野分かな    峰月

頭より 顔へとあふぐ 団扇かな      峰月

前掛に 手を拭きながら 冷奴       峰月

葦戸建つ 町屋の太き 黒柱        峰月

家苞の 南部風鈴 振りてみし       峰月

風立てば 押しなべられて 風知草    峰月

蟻地獄 何の変哲 なきごとく        峰月

  平成十九年 九月  古川 淨雪 選 源流抄


春愁や 妻の居ぬ日の 雨の音      峰月

春愁や 賀茂の瀬音に 灯の落ちて   峰月

祇園より 円山をさす 灯の朧       峰月

春闌くる 地に花の影 生まれけり     峰月

竹秋の 百幹洩るる 日映ろひ       峰月

分校の さくらさくらの 坂の道       峰月

由良川の 魚紋豊かに 暮の春      峰月

  平成十九年 六月  古川 淨雪 選 源流抄


大欅散り 鈍色の 空ばかり         峰月

本丸に 至る火のごと 櫨紅葉        峰月

柏手の 音のふるえる 淑気かな      峰月

通勤の 和服の京の 四日かな       峰月

風花の しばらく路を 吹かれをり      峰月

持ち駒の 香車の一枚 悴みて       峰月

風花に 話の接ぎ穂 うまれけり       峰月

   平成十九年 三月 古川 淨雪 選 源流抄



百幹の 青それぞれや 竹の春       峰月

素晴らしい写生句である。選者も晩秋の嵯峨野路を散策した
ばかりなので、その手入れの良さに感心した。すべてに個性
があり太さ色合いそして年代により異なる。正に 青それぞれや
がその的を得ており、この句に共鳴を覚える。 古川 泰石 

柿熟す 峡を千燈 さながらに        峰月

鴨来たり 親の波紋と 子の波紋      峰月

手が作る 望遠鏡や 望の月         峰月

追ひ越せば つとまた追ひて 秋あかね  峰月

葛の花 大河は海に 突きささる       峰月

急行の 止まらぬ駅や 秋あかね      峰月

  平成十八年 十二月 古川 淨雪 選 源流抄


湧き出でて 流れて消えて 旱川      峰月

地下鉄の 暗きを出でて 大西日      峰月

釣り人の 行きたる後の 河鹿かな     峰月

夏めくや 衿足白き 野点びと        峰月

神の名の 滝のしぶきを いただけり    峰月

降りかかる 水のしぶきや 蝉時雨     峰月

   平成十八年 九月 古川 淨雪 選 源流抄


春蘭の 奢ることなき 香りかな       峰月

三毛猫の ゆるりと渡る 花の道      峰月

仕付け糸 付けしままなる 春着かな   峰月

花の下 鳥のささやき 聞きながら     峰月

花見席 花色草色 京干菓子        峰月

地吹雪と なりて仕舞の 花の舞      峰月

温泉の 余り湯花と 海に果つ        峰月

  平成十八年 六月 古川 淨雪 選  源流抄


お降りや 老いし宮司と 立ち話      峰月

炬燵から 首だけ出して 寝てゐたり    峰月

雪卸し 済めば小さき 家なりし       峰月

数多き 羅漢それぞれ 雪帽子       峰月

枯れ芒 百萬本の 棚引きて        峰月

護摩の火の 消えて辺りの うそ寒し    峰月

振舞ひの かす汁煮えぬ 榾明かり    峰月

  平成十八年 三月 古川 淨雪 選  源流抄


骨董市 先ず一巡の 懐手         峰月

新調す 藍の匂ひの 秋袷         峰月

秋の日を 千の手で受け 観世音     峰月

一山の 一樹 秋日を 集めけり      峰月

満目の 秋桜日和 妻がゐて        峰月

虫の声 踏まねば行けぬ 城の道     峰月

蔦紅葉 焼餅の匂ひの 馬籠宿      峰月

 平成十七年 十二月 古川 淨雪 選  源流抄



黒蟻の 瞬に止まりつ 走りつつ      峰月

寄席跳ねて 単袴の 座り皺        峰月

庵守の 留守や さらめく風知草      峰月

ほたる宿 軒の提灯 消したもう      峰月

渡月橋 影絵のごとき 蚊喰鳥       峰月

  平成十七年 九月 古川 淨雪 選  渓流抄



平成十七年 六月二十九日 熊川宿にて投稿

冬日さす 熊川宿の 曲がりをり      峰月

       平成十七年 六月 古川 淨雪 選

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